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事業モデル、為替、経営管理を取り上げる
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29日、ユーロ圏首脳会議で、
2013年から政府を経由せず直接銀行に資本注入できる
こと、ユーロ圏内の銀行監督制度を統一すること、経済
成長を目的に12兆円(1,200億ユーロ)の資金を投入する
ことが合意された。

中身はロイターや日経で確認してもらうとして、
発表内容から見えたものはというと、

・ESM(欧州安定メカニズム/欧州版IMF)を通じて銀行を
 救済する(連鎖危機回避の確認)
・スペインとイタリアは自助努力を継続する
・両国の障害となっている国債金利増トレンドを抑制する
・そのため、両国を含む国債購入に向けた方向性を示す
 (国債購入の検討・・・というメッセージの打ち出し)

である。

これにより、対スペインの救済スキームが変更された。
・スペイン政府を経由した銀行救済は取りやめにする
・ESMに債務返済の優先権を適用しない
 

前者は、現在でも国債金利の上昇と財政懸念が相互に紐
付いて負に効いているので、これ以上政府負債を増やす
のはやめにしましょうという話で、後者は、先日のスキ
ームでは債務返済優先権がESMにあり、スペイン国債買い
入れが民間で敬遠されていたことを受けての対応だ。

これらの決定で欧州危機への共同対応が進捗したという
判断が働き、いったんユーロが買い戻されたというのが
相場の見方だろう。そして、スペインリスクの低減により、
短期的なユーロ安急進リスクはいったん収束したと見る。
とはいえ、今後も円高トレンドは継続すると予想する。
根拠は2つある。


1つ目は、ギリシャやイタリアといった放漫財政型危機
についての救済策は何ら進展していないことである。

少しおさらいすると、ESMが銀行に資本注入するという
ことは、ユーロ圏全体で銀行損失をカバーする話だ。
欧州危機は住宅バブル崩壊と放漫な国家財政の破綻とに
分けることができ、いずれも銀行が資金の引き受け先と
なっている。

住宅バブル型の場合、銀行不振から経済が回らなくなり、
それが国家財政に悪影響を及ぼしている構図なので銀
行支援について比較的合意形成されやすい。放漫財政
破綻型の場合は、これまで同様、ドイツからの合意引き出
しは困難を極めると予想できる。

結局、今回の合意は、これまでと何ら本質は変わって
いないのだ。だからこそ、両国の国債購入を"検討"する
という言い回しになったのだろう。検討レベルであれば、
ドイツも妥協できる範疇となる。

住宅バブル型の救済スキームについて追記すると、
日本でも資産価値が徐々に目減りしていき底なし沼よ
ろしく銀行から損が出続けたので、おそらくスペインも
そうなるだろう。目先では話題に上がらないだろうが、こ
のスキームが運用されれば、バケツの底がどんどん
広がるだろう。バランスシートの改善には時間がかかるの
で、景気も簡単に回復できまい。したがって、今後も
ユーロ安は継続すると予想する。


2つ目は、12兆円成長戦略の実効性への疑いだ。

域内経済を刺激することがテーマとなっており、使い道
はというと、半分は経済的に弱い国のインフラ整備、
残りの半分は、中小企業支援や若年層の雇用対策に割り
当てる方針となっている。

そもそも論として、競争力の異なる国々を共通通貨で運
営しようとしたことへの矛盾が現在の危機につながって
いると言えるので、成長戦略についてストーリーとして
理解できても実効性が疑わしいし、実際に実行する際の
資源配分をどう調整していくのかについても不安が残る。

実効性の疑わしさというのは、現状で競争力に差がつ
いていることを踏まえると、同じお金を使うにしても効果
に開きが出てくることになるはずなので、稚拙なお金の
使い方だと狙い通りの効果が期待できず、結果的に
財政は改善できないという話だ。財政統合されて
いない現実を踏まえると、最終的には国別に資源配分
される話になるはずで、そうなると投資効率的に見て
正直どうなの、といった感じになることが予想される。

成長戦略を実施したら、日本と同様債務が右肩上がり
になるだろう。俺なら、そうなることを織り込んで、インフ
ラの維持コストや域内ロジコスト低減を図れる公共投資
を基本方針に掲げ、将来的な財政コスト軽減や経済的
な負担コスト低減に向けた布石を打ちたいところだ。


今後の為替動向を見ていく上で我々が持つべき視点は、

・資本注入する基準がどうなるのか
・放漫財政破綻国の取り扱いがどうなるのか

の2点だと俺は考える。

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