上場企業の経営陣は、利益責任を問われる場面が多い。
会社が永続的に儲け続けなければならない組織体であることは間違いない。
しかしながら、その一方で、中長期的な利益に反する、目先の利益確保に
向かう意思決定が行われる場合があるのもまた事実だ。
俺が聞いた話の中で、一番バカバカしいと思った意思決定は在庫利益である。
具体的には、第4四半期あたりで工場の稼動を高め、通期の製造数量を増や
す事で、製品1個当たりの固定費を引き下げ、財務上の利益を量増しするものだ。
その意思決定により生み出される弊害はというと、
短期的に在庫増が発生することから、自社を含む下流領域でキャッシュ
フローを悪化させ、それを解消すべく自社で債権売却を行い手数料を支
払う羽目になる。加えて、翌第1四半期の工場の稼動が低迷することから、
工場では定時割れが起こってしまい、一方で販売速度を上回る在庫が
販売店に押し込まれていることから、余分な保管費用が発生したり、在庫
処分用の奨励金を出さざるを得なくなってしまう事などが挙げられる。
この決定は、問題が相当根深いことを指し示している。なぜなら、その会社
の業績評価が誤っていることを暗に意味しているからだ。
業績評価の基本は、次の3点を同時に満足させるものである。
・利益率が良い(直材を抜いた限利)
・利益額を稼げる
・キャッシュフローも向上する
上記の場合、3番目のキャッシュフローで不合格になる。
この業績評価を運用するにあたり、初期投資が多額のため、一時的に
キャッシュフローが大幅に悪化する場合、どうすれば良いのかという話
が必ず出る。
業績評価については、まず最初に、どのレンジで評価するのか決める
必要がある。次に、時期を区切ってそれぞれに目標を描き、進捗度合
いを評価すれば良い。業態にもよるが、売り出しデビューが勝負の飲食
業界であれば、最初の3ヶ月で判断するだろうし、投資/販売店整備の
場合は、規模にもよるが、半年/1年/3年が尺度だろう。
最後に、上記3要素について補足すると、
利益率は、設計/製造/購買の競争力の指標であり、
利益額は、ビジネスモデル/事業構造の指標であり、
キャッシュフローは、事業の健全性の指標である。
海外取引をしている場合、為替が絡んでくる。この場合は、
利益率は、設計/製造/購買/事業構造の競争力の指標であり、
利益額は、ビジネスモデルの指標であり、
キャッシュフローは、事業の健全性の指標ということになる。