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事業モデル、為替、経営管理を取り上げる
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この機能強化は製品の差別化に必要です!予算承認願います!
差別化は良いが、数字(増益)を持ってこれるのか?


よくあるやり取りだと思う。
だが、とてもではないが本質を突いたやり取りと言いがたい。


俺は、差別化という言葉が嫌いだ。差別化という表現を目にする
ことが多々あり、本質をわかってないように思えるからだ。
機能の差別化、セグメント創出による差別化など、時宜に見合う
使い分けがされていれば、嫌いなどとは言わない。

差別化は、あくまでビジネスで勝ち抜くための手段だ。
差別化が最終目的にすり替わることは、断じて許容すべきでない。


タイトルに2つの差別化を記載している。
いずれも製品軸の観点という点で共通するが、採用するステージや
意味合いは大きく異なるものだ。セグメント創出による差別化が、
今求められる時代だと自覚しなければならないように思う。


機能の差別化は、殆ど説明不要だろう。
機能とは、デザイン、耐久性、操作性、キャパシティー、動力性能、
維持管理コストなど、製品が持つ働きのことである。

機能の差別化が効くのは、その製品市場が成長ステージにあるときだ。
成長ステージでは、魚(顧客)はあちこち回遊しており、こちらの水は
甘いですよとアピールして網打ちしなければならない。甘さ競争をする
上で、機能の差別化は有用であり必然とも言える。

記憶に新しいのは、デジカメや携帯電話だろう。
デジカメで言えば、ズーム機能、手ブレ補正、顔認識、動画撮影、衛星
測位などあったし、携帯電話では、メール、着メロ/着うた、デジカメ、
ラジオ、ワンセグテレビ、お財布携帯などが、市場成長期に付加された
機能群である。

ただ、難点が存在する。
それは、"機能だけ"の差別化だと、すぐ真似されるということだ。
規模の小さな会社がオリジナリティーをひねり出して売れると、大手
企業が似た商品を作って潰しにかかる事を"同質化戦略"という。差別化
戦略の反意語だ。負けてはならじと穴埋めにかかるものだから、最終的
にはブランドイメージ、価格競争の体力勝負になることが多い。
技術的には真似できても、業務の仕組みなどによる優劣差で、価格勝負
で負けないというのが弱者の目指す戦い方だろう。換言すれば、持続的
優位性の確立となろうか。大手は、よほど大きなマーケットでもない
限り、そこまで踏み入ってこないからだ。知恵の絞りどころである。

一方、セグメントの差別化というのは、
製品が従来から持つ機能・メリットを他のサービスと組み合わせるなど
して拡張することで、外見だけ見れば同一製品・サービスのようだが、
実態は新たに別カテゴリーとなる市場を新たに作りだすことで、競合と
の差別化を図るものである。

誰もが思いつくであろうものは、アップルの第3世代i-pod/i-tunes
サービスだろう。音楽のダウンロード販売と携帯音楽再生機を組み合わ
せることで、顧客の囲い込みに成功した事案だ。セグメントの差別化の
本質は、従来ある製品・サービスに何か別の概念やサービスを組み合わ
せることで、1製品・サービスから複数の付加価値をユーザー提供する
ところにある。


これから述べることは、俺の個人的見解だが、
日本国内市場で機能競争した商品を先進国市場に持っていって収益を
たたき出すというビジネスモデルは、既に終わっているように思う。
近年、ビジネス雑誌でよく見る"ガラパゴス化"とは、国内市場に特化
した製品を指す表現だが、それを実行すると、どうしてもハイエンド
製品となってしまう。高度経済成長期では、国内で切磋琢磨した製品
を先進国に持っていけば、低賃金/安定品質の優位性を持って競合を
駆逐できた。ひるがえって現在、その成功モデルは、賃金前提が崩れ
ているため実行不能だし、なにせボリュームが出ないので面積(利益
額面)を伸ばせないものだから、どうしてもじり貧になってしまう。

思い切って、ごちゃごちゃ増殖させた機能を切り捨て、日本品質と
適度な価格の組み合わせで再度世界の席捲を図るべきだと思う。
携帯であれば、個人的にはテレビもカメラも不要だ。意外と、日本
でも俺と同じ考えの人は多いかもしれない。ハイエンド商品は企業
の先進的イメージを維持していくうえで必要な要素といえるが、
グローバルレベルで見てマスターゲットをどこに設定し、どう勝ち
抜いていくかについて真剣に考える時期に来ているように思う。


セグメントの差別化は、構想力が問われるものだ。そう書くと
難しいと思われるかもしれない。とはいえ、考えようによっては
いつでも実現できるものだ。古臭いビジネスであればあるほど、
アイディア勝負でセグメントの差別化は実行できると考える。

何か事案を挙げろと言われれば、パッと思いつくのは八百屋の宅配
サービスだ。商圏を店舗から500メートルと定め、電話やEメールで
注文を受け、時間を決めて自転車なり軽自動車なりで宅配すれば
良い。前提にあるのは、高齢化社会の到来に伴い足腰が弱り、
自分で買いまわりするのがおっくうと感じる顧客層が増加するところに
ある。地域を絞ることで、ポスティングちらしの販促費用を極小化
できるし、会員を増やせば、旬の野菜情報をメルマガ発信することで、
売れ筋喚起するという作戦も立てられるだろう。廃棄ロスを減らすに
は、2-3日前に注文した人に、何かオマケをつけるやり方が考えられる。

もちろん、大手スーパーと勝負するには、価格差というハードル抜き
に語れない。これに対抗するには、あまり大手が揃えてない商品仕入
をすることや、味の良さ、栄養価といった価格以外の判断基準を顧客
に啓蒙提示していく必要が出てくるだろう。勝負の土俵をどうセット
していくのかが根幹・本質としてあり、違いをどうアピールして顧客
に満足(納得)して貰うのかという話である。


他には、古アパートのペット入居可サービスもセグメントの差別化
の例として考えられる。

晩婚化により、一人暮らしが増加するのであるならば、ペットは
擬似家族としての潜在需要は高いと見る。一方で、ペット入居可
のアパートマンションは十分供給できているように見えない。
この仮説が正しければ、ペットを飼うのを嫌わない住人を集め、
"ペット入居可"のアパートとして賃貸提供するのはアリだろう。
もちろん、契約書には、近所トラブルをおこさないこと、動物の
鳴き声がある程度聞こえること了承済みであること、原状回復に
お金がかかる可能性が高いこと、など織り込む必要がある。トラ
ブル回避のため、床や壁の張替えになったらいくらくらいかかる
のか、事前提示すべきだろう。仮説の検証は、複数の賃貸不動産
チェーンに確認すれば可能と見る。


我々は、差別化という言葉を、もっとその本質をかみ締めて用い
なければならない。目指す方向性としては、セグメントの差別化
であり、持続的優位性の確立である。

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